CU東京文京支部ニュース 2023.09
- CU東京文京支部
- 2023年12月12日
- 読了時間: 8分
更新日:2024年4月11日
023年9月号 No.102
〒112-0002 文京区小石川2-21-8 文京区労協内
東京都の最低賃金(時給)が、2023年10月1日から、1,113円(41円アップ)。全国平均1,002円になります。
【Mさん労災申請するも不支給決定!】
労働災害に至った労働実態
組合員のMさん(女性)は、2021年7月特定非営利活動法人ワーカーズコープに就職し、コープみらいに派遣されていました。仕事は板橋区の高島平団地で、コープみらい組合員からの注文商品を戸々の組合員宅に配達するというものです。注文品は蜜柑箱大の発泡スチロールケース、あるいは折りたたみコンテナに梱包されており、一戸に数ケースずつ配達しなければなりません。米や飲料水などはとても重い荷物になります。これらを一日200個ぐらいこなすことが普通でした。
高島平団地ではエレベータのない5階建ての団地を担当していました。階段は二戸ずつ向かい合っていますが、隣の階段とはつながっておらず、隣に配達するのでも1階に戻らなくてはなりません。荷物が数個ならば、同じ家に数度も配達します。
コロナの蔓延で、こうした戸配が急増し仕事量は増え続けていました。
仕事のシステムとして基地となる高島平デポから各号棟には電動自転車に連結したリヤカーで運び台車を下ろし登り口まで運びます。デポは午後6時には閉めてしまうため、昼休みは事実上なく、立っておにぎりを頬張るなどせざるを得ず、トイレも我慢するという状態でした。
その年の11月ごろから右手首にズキンとした痛みを感じ、12月には両手首にと広がりました。土日を挟みで痛みが和らぎまた働くことを繰り返していました。
翌年2022年3月に、同じエリアを担当していた4人のうち一人が異動してしまい、荷物が残った3人の分担になるという事態となり、一日でこなす個数が250個に上ることになりました。さすがに両手首の痛みに加え、両手指のこわばり(手を握れない)、右肩から首にかけて痛みが出て我慢できなくなり、4月27日病院を受診しました。医者からは「仕事はできるならやめ、手を酷使しないようにしないとひどくなる」と言われましたが、すぐにはやめられず、両手首をサポーターで固定し仕事をつづけました。しかし痛みのひどさと、代わりの人が見つかった6月15日に退職しましました。
労災申請
病院には当初自分の健康保険で受診したが、病院の医師は「労災だから」といって労災保険に切り替えてくれました。それ以来治療費は一切支払っていません。
2022年5月池袋労働基準監督署に労災の申請をし、その年の12月には労災課の労働保険専門員の聞き取りもあり、CU東京文京支部の執行委員と「働くもののいのちと健康を守る東京センター」の色部さん同席のもと、専門員への要請もしましたが、2023年1月4日付で「不支給決定通知書」が届きました。労災と認められなかったのです。不支給決定書には本件(病名)「両尺骨突き上げ症候群、頚椎椎間板症」は、労働基準法施行規則第35条別表一の二第3号の4に掲げる業務上疾病には該当しないことから、…とだけ記されていました。
労基署段階で労災が認められない場合、決定を知ってから3ヶ月以内に都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官(審査官)に対して審査請求をすることができます。さらにそこでも認められなかったら、2ヶ月以内に労働保険審査会(審査会)に再審査請求をすることができます。
不支給決定の理由
労働基準監督署に行くと「上肢障害の労災認定」というパンフが置いてありますが、それによると①「上肢等に負担のかかる作業を相当期間従事した後に発症」②「発症前に過重な業務に(3ヶ月以上)就労した」③「過重な業務と発症までの経過が医学上妥当なもの」以上の3つの要件をすべて満たさないと認定されない。とあります。
審査官に審査請求をするにあたり、池袋労基署が行った不支給決定の経過を情報公開によって取り寄せ調べました。
結局、Mさんの労働において、過重な業務と認められる就労は2022年3月下旬から病院に受診して診断のあった4月27日(発症時期とする)までおおむね1ヶ月で認定要件の「3ヶ月継続」は満たしていない。病名の「両尺骨突き上げ症候群は本人の有する疾患であり業務上の疾病ではない」(東京労働局地方労災医員=局医という)という事でした。
審査官への審査請求にあたって、①労働基準法施行規則第35条別表に掲げられた疾病名は例示であって、現に診断した病院の医師は診断書に「両尺骨突き上げ症候群」と書いたうえで、「労災だから」と本人に説明している。局医の見解と違うわけだから一方的な判断である。②Mさんすでに2021年11月から痛みを発症しており、極度に過重となった2022年3月から4月に限って評価し「1ヶ月であって基準の3ヶ月でないから認定しない」というのは認められない。と反論しました。
審査会への再審査請求もこれらの反論を補強していくことになりますが、これが労災にならないのは全く納得できないと思います。(Yさん)
【晴れやかで、凜々しいストライキ!】
「そごう・西武労組」が雇用維持を求めてストライキで立ち上がりました。
晴れやか、凜々しい。たたかう「そごう・西武労組」の人々の顔は光っていました。8月31日「雇用維持と事業継続」を求めて、そごう・西武労働組合はストライキを行った。大手百貨店では61年ぶりというストライキに、マスコミの取材が殺到しました。
午前9時には支援の労働者や個人が池袋の西武本店前に集まった。午前10時、本来ならお店が開く時間である。マスコミは一斉にカメラを入口に向けた。撮影対象は定刻に開店しないデパート入口のシャッターでした。
11時からは「そごう・西武」労組は池袋本店近くの公園に集結、そこから東口の繁華街を一周するデモ行進。出発集会で寺岡泰博委員長は、「きょう一日お客さまにはご迷惑をおかけして心苦しいが、このまま永遠にシャッターが閉まったら元も子もない」と呼びかけました。親会社はセブン&イレブンHD。
デモ行進の参加者は組合員ら300人以上。若い人が多い。「西武池袋本店を守ろう!」「池袋の地に百貨店をのこそう!」のシュプレヒコールをしながら、東口の繁華街を練り歩いた。ひときわ目立ったのは「ストライキ決行中!!」の赤いプラカードでした。
デモのマイクアピールでは、「私たちは労働組合だ。だから全国10店舗4000人の雇用を守りたい。そのためには会社の存続が必要だ。社員の心情、地域への影響などが考慮、協議がつくされないまま会社譲渡を決めていいのか」と丁寧に訴えました。
【アテネフランセ講師のストと労働者性】
語学学校のアテネ・フランセ(東京都千代田区)で働く外国人講師3人が8月24日、最低労働時間を1時間も保証しない雇用契約(新契約)に合意しない場合には雇い止めにされるとして、学校前で同日、50分間ストライキを実施しました。講師らが加入するアテネ・フランセ労働組合によると、学校側は新契約締結以前の講師らとの雇用関係(労働者性)を認めず、無期転換の申請を拒否しています。団体交渉も不調に終わったため、8月18日にストを学校側へ宣告。 同校は1913年創立のフランス語学校で、現在は一般人向けのフランス語教育が事業の中心。一方、学校側はストに至ったことに遺憾の意を示し、「講師によって働き方がそれぞれなので、労働者性についてはグレーな部分がある。学期ごとに生徒が集まって初めて開講できるため、最低労働時間保証は難しい」と主張しています。アテネ・フランセ労働組合代表Yさんは、24日の記者会見で、「今後は雇用関係を認めるという学校側の立場は一見前向きにみえるが、新契約に合意しなければ雇い止めになり、実際には理不尽な新契約の押しつけだ」と学校側の対応を批判。 労組によると、講師の給料は完全時給制で、交通費や諸手当・賞与・定時昇給が無く、雇用保険や社会保険も無いという。
労組は「雇用された労働者」と認めるよう交渉してきたが、学校側は業務委託の個人事業主だと主張していた。2023年7月には、グループレッスンについては今後「雇用契約」を締結すると提案したが、「1時間も最低労働時間を保証しない」「生徒数が5人に満たない場合は閉講とし、1円も保証しない」という内容でした。 この新契約に合意しない場合、2023年8月末で契約の切れる講師たちについては雇い止めにするとの通告を受けました。労組側は「雇用された労働者」であれば、これまでと同じ契約内容で無期限に働く権利(無期転換権)が保障されていると訴えたが、学校側は無期転換の申請を拒否。8月7日の団体交渉で、これまでと同様の最低労働時間を保証すること、無期契約者としての地位の留保を認めることなどを求めたが決裂、ストライキに至った。 Yさんは、理不尽な契約に応じるか雇い止めになるかという現状を「労働者としては、雇い止め覚悟で裁判をするしかなくなる」と説明。「無期転換権は法律で認められているのに、その権利にアクセスできなくなるのだとすれば大きな問題だと思う」と話した。 講師3人が思いを語り「学校に尽くしてきたのに、軽く見られているような感覚です」(12年勤務の男性)「先生だけでなく、生徒さんにとっても良い状況になることを望んでいます」(18年勤務の男性)「この状況を悲しく思っています」(4年勤務の女性)と訴えました。講師に労働契約上ないし労働基準法上の労働者性が認められるか否かという法律上の論点に直結する問題です。
【着替え時間も労働時間です!】
家具小売り大手のイケアが、これまで支払っていなかった着替え時間の賃金を支払うことになったことを8日28日付の毎日新聞で報道した。「うちも支払われていない」みたいな声が結構大きい。確かに、イケアは支払う決断をしたけれど、前提としてこれまで不払いだったってこと、そして、記事にも書いたけど、過去分の不払いについては「支払わない」と言っていること。この2点はきちんと注目しないといけない。決してイケアは〝立派〟な企業ではない。パートの正社員化や同一労働同一賃金など労務政策ではとても評判がよろしい同社にしては、基本的なルールをおろそかにしてきたことは決して褒められたはなしではない。イケアは売り場で働く際に自社のユニフォーム(シャツ、パンツ、靴)を着用しなければならない。「着替えてからタイムカードを押すように」との指示(就業時はその逆)は不払いの証拠。確信犯的に払っていなかったわけだから、過去に遡って払えよという話だ。いずれにせよ、イケアがこうして支払わざる得なくなったことは大きい。過去分を払うところまでセットでやらせれば、今後の同様の闘いには非常に大きな影響を与えるだろう。(2023年8月28日 東海林 智さんFBより一部引用)

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